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思い出ひとつ
                                  深澤友子

 天真爛漫な、いわゆるノー天気な(失礼!)明るいだけの愛すべき母と、全てに慎重で厳格な父のもとに生まれた私は、さてどちらに似たのであろうか。
もちろん100㌫、ピュアな似方ではなく、両方ともに少しずつ中途半端な似方をしているが。
 子煩悩でもあった父は、私が高校生のころのある日、学校で何かあったのだろうか(原因は全く覚えていないが・・・いやなことが記憶にないところは母に似たらしい)
ある日、しょんぼりしての帰宅に、たまたま家にいてそれに気づいた父は、すかさずなにも聞かず車に乗せ、奈良井川の川原に連れ出し、少し放っておいてくれた。
自然の中に放してくれたのである。其のことにどんなに救われたことか。川原の大きな石に座り、次々に来る繰り返す流れをじっと見、向こう岸の山並みを見、
初夏であったから気持ちのよい風に全身をなでられ、それでもきりのない、とうとうとした流れに其の時の悩みをすっかり流し終わったころを見計らって、帰宅を促された。
 家に帰り、何事もなかったように夕食をぱくつく。母はこのことを知っていたのか否。
 多感な娘の私に、とことん付き合ったくれた明治生まれの両親。今思えば、なんと幸せであったことか。
 其の私が今週末、愛娘を嫁がせる運びとなった。とても複雑な思いでいる。私が両親から受けた愛の半分でも、娘に伝えることができたであろうか。
いつもしっかり者で、娘の甘えるところは見たことがない。それでよかったのだろうか。今、反省しきりである。とにかく幸せになって欲しい。
愚かなる母の願いはそれだけである。

 さて、5月下旬に総会も終わり、又新しい同窓会年度が始まりました。
今年度もなにとぞよろしくお願い申し上げます。

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